『彼にしては淡々とした…』
フィッシャー=ディースカウの「冬の旅」はグラモフォンのムーアと組んだものが有名ですが、私はあれを好みません。「分かってるよ!」といいたくなるような説明過多な歌唱だと思います。
デムスとの「冬の旅」は淡々としたたたずまいです。テンポも早めです。フィッシャー=ディースカウも、とてもすっきり気品がある歌唱を聞かせてくれます。もともと表現力がある人なので、このくらいが好ましい気がします。もちろん、ライアー回しなどは、こちらの方が数等出来がよいと思います。
声質も同様で、後年の「金持ちオジサン」のものではなく、まだ熟れていない青い果実のようですが、それが「冬の旅」にぴったりです。録音のせいもあるのかも知れません。
欠点は、ピアノが遠い事。私の意見は一般的ではないと思いますが、ぜひ一聴してみてください。