『おおらかな冬の旅があってもいいじゃないか』
私は、ドイツ・リートが嫌いだ。特に、フィッシャー=ディースカウの考え抜かれた思考と技巧には辟易してしまう。
彼の絶対音楽に対峙するようなやり方では、最終的には論理と歌詞が相入れないことになってしまうのだ。考える程に支離滅裂具合が増してるように思う。
彼の録音ならば、未だ試行錯誤中といったショスタコやライマンあたりは楽しめるのだが…。
閑話休題。ビアンコーニとプライの当盤は『合わせの段階では2人でいろいろ考えたんだけど、ま、いいか。フツーに弾いちゃえ歌っちゃえ♪』的な自然体の演奏。
「いろいろ考えたあとのフツーに」ってのが案外難しいんですよね?。これに比べたらプライの旧盤(ピアノはサヴァリッシュ。なお、エンゲル盤は未聴です)は、フツーにやろうとしたのにギコチナクなってる感じがする。
おおらかで自然体とは言っても、曲が曲だけに、太陽が3つに見えたりする不健康でビョーキ的、被害妄想(監視妄想?追跡妄想?→誰も見てないってばよ)的ムードも充分に出てます。
この辺は図らずもシューベルトの天才性が浮き彫りになってますね。
そんなこんなで歌謡曲的に楽しめる仕上がりになっております。ので。ドイツ・リート嫌いな方にオススメです。
辿り着いた『ライアー回し』のシンミリ具合が本当に素晴らしい!!
色調はパステルで明るいのに、全曲が終わると部屋中が寂しさに包まれる…。