『心が風にふかれてしまう曲』
浜省のライフテーマとして「恋人や伴侶との死別」がある。
そこから目をつむらず、逃げずに遡って男女の恋愛の「儚さ」をどう考えるか、に彼の究極的な主題があるという。これは渋谷陽一氏と語った対談やあちこちで本人が口にしている。
この曲は「星の指輪」「初秋」という連なりと同じ文脈でみつめるうた。
だから彼のうたはTVを必要としなくとも、口コミで人の心に広がっている。これら3曲をきくと、女を想う男気のスイッチが入ってしまう。
個人的な思い出は、明け方の夢に別れた恋人が現れるときが、いちばん胸を締め付けた。
そんな夢を見た朝はしばらくベッドでじっとしてしまう。
忘れたはずの恋なのに、また心がざわめいてしまうのだ。
こんな時ははやく、カーテンを開けて日の光を浴びるのがいちばんいい。
そうじゃないと次へ進めないほどだから。
“愛の疾風に吹かれた人は 愛が遥かに遠のいたあとも
ざわめいている 揺れている
風に吹かれて 枯葦がそよぐ 風が去れば 素直に静まる
ひとだけが 過ぎた昔の 愛の疾風に いくたびとなく 吹かれざわめき
歌いやめない ――思い出を”
吉野弘「愛そして風」
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